筋肉は数千本の筋繊維が束になって出来ています。筋繊維は筋膜といわれる組織によって包まれていて、トレーニングなどで筋肉に過負荷がかかるとその筋繊維が目には見えないようなレベルで損傷します。切れた筋繊維が回復する際には、前と同じ太さではまた同じ負荷で切れてしまうため、以前よりわずかに太く修復されます。この現象を「超回復」とよびますが、この現象を繰り返して筋肉は太くなっていくとされています。
筋肉痛はこの修復の段階で発生するでの炎症の一種です。そのメカニズムは次のように考えられています。痛みを感じる痛覚は、筋膜には存在しますが筋繊維には存在しません。そのため、筋繊維に傷がついてもすぐには痛みを感じません。しかし、時間の経過とともに筋繊維の傷の修復が始まり、白血球が傷ついた筋繊維をとり除きます。このときに発痛物質が発生し、この発痛物質が筋膜にある痛覚を刺激して痛みが起こります。これが「筋肉痛」というわけです。
歳をとると筋肉痛が2,3日後に発生すると言われていますが、この原因は歳をとるにつれて、毛細血管の流れが悪くなったり、流れの止まった血管が出てくるため、白血球が集まりにくくなります。これにより、白血球が傷ついた筋繊維を取り除くのに時間がかかり、発痛物質の発生が遅れます。その結果、痛みを感じるのが遅くなってしまうのではないかと考えられています。つまり、筋肉痛が2日後に発生することがあるのは、年齢を重ねたことによって血液の流れが悪くなり、白血球の集まりが遅くなってしまったことなどによって起きていると考えられているわけです。
筋肉痛の現象の理由として考えられることがもうひとつあります。中程度の運動を長い時間続けていた場合、筋肉中に「乳酸」という物質が発生します。乳酸は筋肉の収縮を妨げる疲労物質です。乳酸が筋肉中にたまると毛細血管が詰まって酸素が筋肉に運ばれなくなり、鈍い痛みが走ります。そして、その乳酸が完全に除去されず残ってしまった場合には、それが固まり始めて毛細血管にとどまってしまい、筋肉に酸素が運ばれなくなって鈍痛が走ります。原理は肩こりなどのコリの現象と同じです。
筋肉痛の原因となる筋繊維の損傷は、筋肉が温まっていないほど起こりやすいので、運動する際にはウォーミングアップを行い、本番の運動と似た運動を軽く行っておくことが大切です。また、運動の終了直後には軽いジョギングやストレッチングなどのクールダウン、またはマッサージを行い、筋肉をほぐすことで血液の循環を元の状態に戻してやると良いでしょう。
筋肉痛になった場合、あまりにも痛みが激しければ、患部を冷やすことで一時的に痛みを和らげることが出来ます。しかし、筋肉痛からの回復を早めるためにはマッサージや入浴によって筋肉を温めることが必要です。なぜなら、温めることによって筋肉の修復速度が増し、乳酸を除去する能力が上がるからです。筋肉痛は、ほとんどの人が3日もすれば回復します。1週間やそれ以上長引くことがあったら医師に相談することをお勧めします。
※この文章は【子どものスポーツ医学入門】を参考にしています。