バタ足で足が沈む
もともと人間の体は下半身が沈みやすくできています。これは大腿部(ふともも)に大きな筋肉があるからです。上半身にもたくさん筋肉はあるのですが、肺が浮き袋の役目を果たすので上半身は沈みにくくなっています。
それに加えて、膝を大きく曲げてバタ足(キック)をしてしまうとますます下半身は沈んでいきます。
膝を曲げることは、中上級者になるにつれて多少必要にはなりますが、最初のうちは膝は基本的に伸ばすものと思っていて下さい。膝を伸ばすことで脚全体で水を押し下げることが出来、下半身が沈みにくくなります。
膝を曲げてばた足(キック)してしまう人は、クロールはキックによる推進力が大きいと思っているのかもしれません。それで足を大きくバタバタさせてしまう。最初のうちは足で進もうという意識はあまり必要ありません。クロールのキックは下半身を浮かせて姿勢を安定させて、上半身のリズムを助けるものという意識でいいと思います。
水しぶきが大きく立つのは膝が曲がっている証拠です。また水しぶきが多ければ多いほど水の抵抗が大きくなります。そういうバタ足は沈みやすいので、浮かそうとますます勢いよく足をばたつかせる羽目になります。それですぐに疲れてしまいます。
キックを打つには下半身の筋肉が総動員されます。人間のなかで1番大きな筋肉である大腿筋をかなり使います。そのためキックを打ちすぎると体力の消耗が激しくなり、結果として長く泳げなくなってしまいます。水泳は足から疲れるのです。
膝を伸ばすことと同様に足首も伸ばす必要があります。足の甲をまっすぐに伸ばし、足首に出来るだけ角度がつかないようにします。足首に角度がついていると水の抵抗が非常に大きくなってしまいます。また足首を伸ばしていれば足の甲で水を押し下げることが可能になり、浮力が増すからです。
こうしてばた足は脚全体をのばした状態でおこないますが、イメージとしてよく言われるのは「ムチをしならせるように」ということです。でも、ムチの動きをじっと見る機会なんてまず無いですよね(笑)。で、僕はコレに近いかなと思ったものがあります。それは子どもの頃に誰でも一度はやったことがあると思うのですが「鉛筆やペンの端を持って小刻みに揺らすと、まっすぐなはずのペンが曲がって見える」というアレです。
やってみるとよくわかるのですが、根元の方が大きく曲がり(曲がって見え)、全体もしなやかに曲がって見えますよね。指で持っている方がふともも側です。股関節を使って脚全体の上下動を作っているものと見立ててください。
これが基本的な動きですが、上達に向っての膝や足首の使い方というのがあります。これは「ばた足(キック)の上達」に続きます。
クロールで体が沈む
基本的には人間は水に浮くものだと考えてよいと思いますが、ある程度正しい姿勢を保たなければ沈んでいってしまいます。浮く姿勢とは、手足を自然な状態でまっすぐ伸ばし、力を抜いてリラックスした水平姿勢のことを指します。
泳ぎ始めるとすぐに沈んで行ってしまうのは、この水平姿勢が出来ていないか、キックがの形が悪く脚から沈んで行ってしまうケースに分けられます。後者については、水泳豆知識のふたつ下の項目「ばた足で足が沈む」で詳しく説明します。ここでは前者についてお話します。
先の浮く姿勢にプラスして、泳ぐために水の抵抗を出来るだけ減らしたした姿勢がストリームラインと呼ばれるものです。この形が上手くとれていればたいていは沈んで行くことはありません。僕がイメージしている理想的なストリームラインのポイントは下記の3つです。
両腕を耳のやや後ろにつけるようにして伸ばし、両手を重ね合わせる。
腰、膝を曲げず、両脚から手までが1本の丸太になったようなイメージで伸ばす(自分の肩幅の太さの丸太で、先端に行くにつれて細くなっている鉛筆型のイメージ)。
足首も伸ばし気味にし、両脚は軽く閉じてそろえておく。
ただ、体の硬い人は両手を無理に重ね合わせる必要はありません。親指が重なり合うぐらいでも充分です。無理に重ね合わせようとすると力が入ってしまいます。このリキんだ状態というのは沈みにつながります。ストリームラインを形作る場合に限らず、リキむ・肩に力が入る・こわばって硬直するという状態は確実に沈んでいきます。浮くためにはまずリラックスが一番重要なのです。そのため水が怖い方はどうしても体がこわばってしまいますから、水に慣れることから始めましょう。
ストリームラインを作ったときに、腕が開き気味の方に多いのが頭が上がってしまうケースです。この形ですとどうしても下半身が沈んでしまいます。頭が上がってしまうと相対的に足が下がりますよね。もともと人間の体は下半身が沈みやすいのに、さらにこの形になってしまうと確実に脚・足は沈んでしまいます。
逆に、肺に空気がたくさん入っていない状態というのは上半身が沈みやすくなっています。上半身が沈むとあわててしまいますが、息継ぎをして空気を吸い込めばまた浮いてきますのであわてずしっかりと息を吸ってみてください。